ヒナゲシの花、今日も健康に実況中 (ページ20)

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「会社員の日向A」は電話をとる時、故意的に声のトーンを上げて
「女性の業務職」としての「良さげな声」を選んでいるけれど

「ヒナゲシの声」もまた、「日向A」が出す素の声とは違っていた。

いずれ、歳をとるにつれて声が低くなる傾向の「女」である以上
調整も不要になっていくだろうが、それは自然なものではないかもしれない。

この悩みもこの人には言ったことがあった。

「もっと楽にしていいんだよ、仕事でもないし。

　“ヒナゲシ”が楽しんだ先に、誰かの楽しいがある、でも良いんだから」

「ていうか、俺らセットで遊んでて喜んでくれる人って
“俺ら”だから良いのであって、そこに性別ってそんなに大事なのかね？」

「まー…だから…、こう色々話したけど、結論俺は大丈夫。」

「他のみんなも大丈夫だったから“最後の俺”のところに話が来たんでしょ？」

『…っ、うん。』

これが最後の、私が求めた回答

「じゃー、これで進めるね」

これで進める

そう言った、らっだぁの言葉に遂に、やっぱり泣いてしまった。

本当にそうだ、これが最後だったんだ。

これで…黒木さんが言ってたように、ここからが私の“戦争”な訳だ。

これからのビジョンができたことで不安にもなって、でも皆の言葉に安心して、

ぐちゃぐちゃの感情と、
やっと土俵に立ててお日さん(みんな)と向き合えることに胸が熱い。

「一本目の道を歩ききったんだからさ。頑張ったね、お疲れ様。」

「あとはさ、少し休んで次の道曲がって歩き出すだけだよ。
　そっから先は、俺達もいるから大丈夫でしょ。なんとかなる。」

「だからメソメソすんな〜？」

クスクスと嘲笑ではなく、小さい子に向けるような
今電話越しに話しているはずなのに、見知った顔が優しく笑うのが目に浮かぶ。

居ないはずなのに頭を撫でられるようなむず痒さ。

これでやっと、私のための行動に移せる。

不安だ。みんなに…リスナーにもこの人たちにも失望されたくない。

でも私のための行動は、私の言いたいことを代弁してくれると…

自分のために頑張ったことは、自分の心の平穏に繋がっていくと
些細でも、それを証明するための足掛かりになっていくと思いたいから

『っ…迷惑、かけたらごめんｯ、でも…頑張りたいから…』

『…頑張らせて』

自分なりに振り絞った決意表明に、電波越しの男は
「ん、頑張れ」とただ一言返して、きっとまた電波越しに優しく笑んだのだろう。

微かに聞こえた、ふふという笑い声で、やっと私も笑えたのだ。