【d!】ヤンデレを享受しろ。 (ページ8)

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tn「はい、あーん」

トントンは予め用意しておいたオムライスを掬い、ふーふーと冷ましてからAの口の前まで持っていってやる。
Aは口を大きく開き、ぱくりとそれを飲み込んだ。
今の2人はさながら餌を与える親鳥とそれを待つ雛のよう。

「おしひ〜」

tn「相変わらず美味そうに食うな」

「だって美味しいもん。もう一口ちょうだい」

tn「そんな焦らんでも誰も取らへんよ」

Aが咀嚼している間、トントンはオキシトシンに侵された脳でぼーっと彼女を眺めていると、Aの口元にケチャップがついているのが目に入った。
彼女は気づいていないのか、幼子を連想させるような満面の笑みで、もきゅもきゅとオムライスを頬張っている。

tn「A」

名前を呼ばれたAが「んー？」とトントンの方を振り向くと、急に彼の顔が近付いてきた。
何かと思い咄嗟に目を瞑ると、彼女の顎が優しく持ち上げられる。いわゆる顎クイだ。

刹那、ツンとしたアルコールの匂いが鼻を掠めた。そして口元を湿っぽいもので優しく拭われる。
鼻と口を塞がれ息がしづらく、Aは思わずトントンから逃げるように体をくねらせた。

「んゃ、」

tn「ケチャップほっぺについとったで」

「あんがと。やっぱり童さんにちゅーする勇気はなかったかー」

tn「なんや、期待してたん？」

トントンはニヤリと笑い、わっるい顔でAを見つめた。
するとAは図星だと言わんばかりに、顔を真っ赤にしてキャンキャンと鳴き始める。

「なっ、全然違うから！はいこの話おしまい！
　トンちゃん、はやくオムライス！」

あからさまに話題を逸らしたAに、トントンは思わず笑みをこぼした。

この世界にこんなにも馬鹿で単純な女が存在していいのだろうか。否、いい訳がない。
誰かが世話をしなければ、弱っちいAはすぐに悪いやつに騙され、殺されてしまうだろう。

＿＿Aは俺が守らなアカンねん。俺がおらんと、何もできんのやから。

Aという女は何故こんなにも男を狂わせてしまうのだろうか。また、ここまで彼女に酔心する男らもつくづく不思議である。