【d!】蛇とイチゴ【zm】 (ページ16)

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カウンセリングページ16

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次の瞬間、遠くから誰かが叫んでいるような大きな声が聞こえた。今この泣いている状態を人に見られるのはまずい、と慌てて頬を擦る。

「え！？なになになに！？」

驚きや焦りを含んだ声と、ずるずると縁側から引き摺るような音がする。そこには、どこかへ行ったはずのゾムがいて、後ろ手に何かを引き摺りながら向かってきていた。
ぽい、と目の前に置かれたそれは、その扱いの粗雑さからは予想出来なかったが、どう考えても物なんかじゃなく人間で、それも見覚えがある人だった。記憶が確かなら、初日にシャオロンと一緒に迎えに来てくれて、車を運転をしてくれた人だ。

「え、ゾム、なに？」

酷く戸惑った男は皺の寄った襟元を正しながらそう言った。どうやら、襟を掴まれて引き摺られてきたらしい。

「別に。」

ゾムはバツが悪そうに答える。男は目の前にいる月明かりに照らされたAの顔を見てギョッと驚いた顔をした。

「なんで泣いてんの！？」

男は事情を聞きたくてゾムの方を見たが、ゾムはそっぽを向いて答える様子はない。こんなん職務怠慢やろ、という男の心の中のつぶやきは届かなかった。
男がAを見て、ゾムを見て、もう一度それを繰り返し、顔色を窺った。

「えっと、話聞こか？」

そこからはほとんどカウンセリングに似たようなものだった。祖母の元に帰りたい、と泣くAの話を鬱と名乗った男はうんうんとただ頷いて、急かすことも、飽きることもなく落ち着くまで聞いた。彼が、Aに同情したり、哀れんだり、ましてやゾムの味方をするようなアドバイザーじゃなかったところが大きい。今、Aにそれは最も不必要なものだから。
春の夜風が、慰めるように背中を撫でる。正直、どうしてゾムが鬱を連れてきたのか、全く意味が分からなかったけれど、Aはただそうやって話を聞いてくれる人がいて、ぎゅうぎゅうで苦しかった心が掃除したみたいに軽くなるのを感じた。

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