【d!】蛇とイチゴ【zm】 (ページ13)

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杞憂ページ13

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ひとりぼっちにされちゃったらどうしよう、Aのそんな考えは杞憂に終わった。そりゃあもちろん全員が全員とものすごく仲が良い、なんてことはないものの、今では小さくてふわふわしてておっとりした女の子たちのグループに入れてもらって、狭く深くで仲良くさせて貰っている。
ヤクザの娘だから、と偏見を持っている人もいるみたいだけれど、今仲良くしている子たちは一切そんなふうにAを見ることはなく、ただの友達として接してくれるところが優しくて大好きになるのはあっという間だった。

「この前弟が勝手に私のアイス食べててさ〜。」
「それは許せないやつだね。」
「そう。だからお返しに弟の分のドーナツ食べちゃった。」
「それ一生終わらないやつだよ〜。」
「こうやって連鎖していくんだよね。」
「うちはお兄ちゃんにこれ食べたいっておねだりしたら目の前ですごい勢いで食べられた！」
「あはは！お兄ちゃんかわいい！」
「えー！？どこがかわいいの！」
「うちはお父さんにおねだりしたら夜中でもコンビニに買いに行ってくれるよ。」
「え〜！めちゃくちゃ溺愛されてるじゃん！」

なんてことない会話。世間話。難しいことはひとつも言っていないし、誰かを困らせるようなことは少しもなかった。
お昼ご飯はお料理が上手な人がお弁当を作ってくれているみたいで、食べ慣れた祖母の味とは違うけれど、おいしい料理がこれでもかというくらいお弁当箱に詰められている。

「Aちゃんは？好きなアイス何？」
「え〜そうだな〜。おばあちゃんが買ってくれるアイス、あずきの固いアイスかモナカアイスしかなかったんだよね。」

Aがそう言うと、周りの子はそうだよね、と共感して笑っていた。祖母や祖父が孫の好きな物を買い与えるのはどこも同じらしい。うちも小さい頃に好きって言ったお菓子がずっとおじいちゃん家に買い置きしてあってさ、ずっとそれが好きだと思ってるんだよね、なんて話を聞くと、自然と笑みが溢れた。

「おばあちゃんと一緒に暮らしてたからさ、おやつに出てくるのは甘納豆とかだったよ。」

家族の話を聞いていると、つい最近まで祖母と一緒にいたのに、懐かしいような長らく会っていないような感覚に襲われる。誰も悲しい話なんてしていないのに、ふと寂しさを感じた。
それは、昼休み終了のチャイムが鳴っても、一日の授業が終わっても、真っ白な服についてしまったミートソースみたいに、もやもやと心にこびりついて離れなかった。

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